子供の頃、おばけクワガタを見た事を思い出した。
小学校の裏手の坂を上った先に、地元の小学生の間で 「クワガタの森」と呼ばれる森があった。
夏休みになるとこぞってそこで虫捕りに興じ、 互いに大きさを競い合う。自分もその内の一人だ。
懐中電灯を片手に、仕掛けておいた罠の様子を見に夜明け前の森を進んでいく。
少し歩いたところで異様な臭気を感じ、 誰ぞ野糞でもしたかと小学生ならではの好奇心で獣道を外れると
朽木のようなものが暗い森の中を更に黒く切り抜いている。
恐る恐る懐中電灯で照らし出すと、
そこに横たわっていたのは体長2mを超えるであろう巨大なクワガタだった。
大きいにも限度がある。
声にならない悲鳴を上げながらほうほうの体で逃げ出した。
その後の噂の広まり方も尋常ではなかった。
正体について様々な憶測が飛び交い、 いくつかの捜索隊も結成されたらしい。
いつ間にやら「幽霊が出た」の「火の玉を見た」のと尾ひれまでついて、 校外でも話題になった。
児童の深夜徘徊が学校や保護者に問題視されるまでにさほど時間はかからず、
最終的に「不審者が出没するため昼夜を問わず立入禁止」のお触れが出たことで
事件は闇の中、幕を引いた。
今、あの森はどうなっているだろう。
あなたにはこの意味が分かりますか?
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怖いのが苦手な人は読まないで下さい…
【 解説 】
『おばけクワガタ』の正体はおそらく、
真っ黒に焦げた人間の焼死体
(体長2mを超えていたということから、 2人以上だろう)
『異様な臭気』はこの焦げた 人間の焼死体のせいだろう。
『火の玉』は死体を燃やすために使った火。
懐中電灯を片手に行くほど暗く、
『クワガタ』目的であれば、
まだ子供という面でも黒い物を『クワガタ』と誤認しても仕方ない。
『不審者が出没するため昼夜を問わず立入禁止』
となったのは、おそらく死体が焼かれていたことを確認したため、
危険だからと立ち入り禁止にして、
オブラートに包んで子供たちを遠ざけたかったのだろう。
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