ところどころフェイクも入れてあるのと、もう何年も前の話だから若干矛盾があったらごめん。
バイト先のスタンドは24時間営業なんだけど、夜中は地元のヤンキーがちらほらするようなちょっと物騒な場所だったんだわ。
というのも、スタンドは山のふもとにあって、道沿いに山に入っていくと地元で有名な心霊スポットがあるっていうのが理由。ようするにうちのスタンドが度胸試しに来たヤンキーにとってオアシス的な存在だったらしい。
山の中に入っていくと、トンネルがあるんだが、そのトンネルのある道から1本外れた道に昔使っていたトンネルがあって、そこが心霊スポットになっている。どうやら昔そこでけっこうひどい事件(噂ではレイプ殺人とか集団リンチ)があって、それで心霊スポットになっているらしい。
トンネルの真ん中で車を止めて、パッシング3回、クラクション3回鳴らした後、写真を撮ると幽霊が映るっていう噂を試したことがある。
まぁ、もちろん何も映らなかったんだけど(笑
とまぁ、俺のバイト先のガソリンスタンドはそんな心霊スポットの近くにあったわけなんだ。
普段俺は大学が終わったあと、夕方にスタンドでバイトしていたんだけど、夏休みってこともあって、ちょこちょこ夜勤も入っていた。
んで、何してるかっていうと、すべての給油レーンに監視カメラがついていて、給油操作を監視してるんだよ。
お客が給油ノズルをあげると、監視室のモニターがピコンピコンって鳴って、モニターで安全確認が取れたら、給油許可ボタンを押してあげるって仕事。だからたまに給油ノズルを握ってもすぐにガソリン出てこないことない?あれ、監視してるスタッフが給油許可ボタン押し忘れてるんだよね。
まぁアルバイトなんて、適当に許可ボタン押してるんだけどね。基本、監視カメラはかわいい子が車から出てきた時に監視するくらいにしか使ってないから。
スタンドの店舗って、ガラス張りのイメージあるけど、夜間は防犯のためシャッターかブラインド閉めて中が見えないようになってるのよ。
んで、電気も消してるんだけど、まぁモニターの明かりで十分お互いの顔がわかる程度には明るいだけどね。
その日もいつも通り、モニターと監視カメラのケーブル引っこ抜いて、もってきてたWiiを接続してAとゲームしてた。
といっても夜勤に入れば一晩でだいたい2~3回くらいインターホンが鳴るんだけど。ちなみにインターホンは各給油レーンについていて、操作とかわかんない人が押してくるやつね。
もし、機械のエラーとかならモニターにエラーの表示とブザーが鳴るようになっているから、基本それ以外のインターホンは無視してた。
でも1~2分くらいたってからまたインターホンが鳴ったからAと「うぜーなぁ」とか言いながら、いったんゲームをやめて、モニターのケーブルをつなぎなおし、監視カメラの映像を見ることにしたんだ。
うちのスタンドは1番から4番まで給油レーンがあって、山側から1番になっている。インターホンは1番から鳴っていたんだけど、俺たちが監視モニターの映像に切り替えた時にはすでに2回目のインターホンも鳴りやんでいて、1番レーンには誰も映っていなかった。
Aが舌打ちしていた。まぁ俺もイラッとしたので、スタンドのどっかにインターホン押した馬鹿がうつってないかなーって、監視カメラのチャンネルを回しながら探してみた。
ちなみに監視カメラは、まず外に設置されているのが、1~4番レーンに1台ずつ。灯油の給油場所に1台、店舗を出てすぐのところにある釣銭機に2台、店舗に向かって左側にピット(タイヤ交換とかオイル交換する作業スペース)があって、そこに1台設置されている。
店舗の中には2台あって、店舗の中から入口の自動扉を映すように1台ある。あとはなぜか監視室を監視するために1台設置してある。店舗内のカメラは音声も録音できるらしい。
普段はモニターを4分割して、1~4番レーンがモニターに映っている感じ。
チャンネルを回すと、4分割画面が1つだけの表示になって、順番に1つずつ映した後、最初の4分割に戻るように設定されている。
ちなみに夜勤でゲームしているのは店長公認ね。
A「操作わかんなくて帰っちゃったんじゃないすかね?」
と、一通りスタンドの監視カメラを見回してみたけど、誰もいなかった。一応、最後に監視室のモニターを映してみたけど、当然モニターを操作する俺とAの姿しか映っていなかった。
トゥルルルルルル
またインターホンが鳴った。今度は2番からだった。
俺A「馬鹿キター!!」
俺「1番だめなら2番とかあほすぎ!笑」
さっそく俺はチャンネルを回して最初の4分割画面を表示した。
A「あれ・・・いないっすね」
俺はさらにチャンネルを回して、2番レーンのみモニターに映るようにしてみたけど、やっぱり誰も映っていなかった。
俺「ヤンキーのいたずらか?見て来いよ」
A「いやっすよ。ヤンキーにからまれたらどうするんすか」
これ以上確かめるには外に出てみるしかないが、さすがにちょっと怖いのとヤンキーに絡まれるのも嫌だったので、しばらく様子を見た後、またWiiに接続しなおしてゲームをやりはじめた。
それから1時間くらいは何も起きなかったので、すっかり忘れて俺とAはゲームをしていた。
時刻は夜中の3時を少し過ぎたくらいだった。夜中といえど、普段なら1時間に4,5台は客が来るのに、ここ1時間半くらいは1台も来ていなかった。
俺「確かになーまぁでもこんなもんやろ」
A「そっすねー」
といった具合にあまり気にしていなかった。
トゥルルルルルル
またインターホンが鳴った。今度は3番レーンだった。さっきより店舗に近づいてきたので正直俺はドキっとした。
A「チッ」
俺はさっきのこともあったのでインターホンにビビっていたが、Aは舌打ちをしながらパッと受話器を取ってインターホンにでた。
A「はい、どっかしましたかー?」
A「んませーん おーい」
どうやら応答がないみたいだった。俺はそのやり取りの間にまたWiiから監視カメラにモニターをつなぎなおしていた。
A「まじっすか?こっちもなんもしゃべんないんすよ」
インターホンが鳴った3番レーンには車どころか人ひとりすら映っていない。
Aもモニターを見ながら受話器をもとに戻そうとすると
「…アケテ」
俺とAは顔を見合わせた。とっさに受話器をもとに戻すA。
A「ちょ・・・聞こえました?」
俺は黙ってうなずく。
A「まじっすか!ちょ、これってもしかして幽霊じゃないっすか!?」
俺は激しくビビってたんだが、やたらAはテンションが高かった。というのも、俺が各地の心霊スポットにいっているのも、このAが心霊スポット巡りが大好物でそれに付き合わされていたからだった。
A「それに1番からちょっとずつこっちに近づいてきてるじゃないっすか!」
A「でも2番から3番まで時間かかりすぎでウケる!笑)ハイハイでもしてるんすかね?」
確かに、1番の次に2番が鳴ったのは5分後くらいだったが、3番が鳴ったのは1時間半ぶりくらいだった。
トゥルルルルルル
すると今度は4番レーンのインターホンが鳴った。
A「キター!!!!!」
もう俺は正直ガクブル状態だったのに、Aは超ハイテンションで急いで4番レーンにモニターを切り替えていた。
もちろん何も映っていない。
ふとモニターからAに目を移すと、Aは受話器を取ってインターホンに出ていた。ただ、無言で突っ立ったまま、店舗の入り口の方を凝視していた。
俺「おい、どうしたんだよ?」
俺は心配になってAに声をかけたが反応がなかった。
俺「おい、冗談はやめろよ、まじでやばいって」
もう正直突然のAの態度に俺はパニック状態になっていた。
A「・・・俺さん」
A「聞こえないんすか・・・?」
Aは入口から目を離さず、受話器をそっともとの位置に戻した。
俺「・・・なんか聞こえるのか?」
A「誰かが入口をすげーたたいてる」
俺「・・・いや、なんも聞こえないぞ」
Aには入口をたたく音が聞こえているようだが、俺にはまったく聞こえていなかった。
すると、Aがおもむろに受話器に手を伸ばして、釣銭機のインターホンとつないだ。
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンッ!!
入口の横に設置してある釣銭機のインターホンが、入口付近の音を拾って聞こえてきた。
もうパニックで俺は死んだみたいに硬直して目を見開いてガクガク震えていた。
受話器から聞こえてくる入口をたたく音はしばらくの間続いた後、ぴたりとやんだ。
一瞬ホッとしたのも束の間
「アケテ」
釣銭機のインターホン越しにあの声が聞こえてきた。
急いでAは受話器をもとに戻した。
トゥルルルルルル トゥルルルルルル トゥルルルルルル
すると今度は複数のインターホンが鳴り始めた。
俺とAは恐怖でお互い身を寄せ合い、耳をふさいで固まっていた。ただ、どんなに強く耳をふさいでもインターホンの音はやたらとはっきり聞こえてくる。
俺たちは受話器から目が離せなかった。
A「俺さん・・・・」
震えた声で俺を呼んだAはモニターを指さしていた。
恐る恐るモニターに俺は目をやった。
おそらく釣銭機を映していた監視カメラいっぱいに、赤黒いやけどの跡のような皮膚をした何かの顔というよりも片目の周辺が映っており、目はひんむいているが、黒目がぎょろぎょろとカメラの向こう側を覗き込むように動いていた。
それに監視カメラは天井についている。いったいどうなっているのか、もう本当にこの何かが何なのかわからずにただ俺たちもそのモニターを見つめることしかできなかった。
Aがカメラのチャンネルを回した。2台目の釣銭機の監視カメラにモニターが切り替わったが、そこには何も映っていなかった。
それからAは一通りカメラを回したが、アイツはどこにも映っておらず、気が付いたらインターホンも鳴りやんでいた。
俺とAは顔を見合わせて、ふぅと息を吐いた。
瞬間
ガタガタガタガタガタガタッッ
今度は俺の耳にもはっきり聞こえた。
説明しにくいんだが、隣のピットと店舗は50cm四方くらいの四角い連絡用扉でつながっている。少しコツがいるが、ひねって押すことで開けることができ、鍵はかけることができない。
ただ、夜中はそもそもピットの入り口が閉まって鍵がかかっているはずなので防犯上問題はなかったはずなんだが。
ガタガタガタガタガタガタッッ
・・・やばいやばいやばいやばい
当然、俺もAも連絡用扉に鍵がかけれないことは知っている。
連絡用扉を開けようとする音はだんだんと強くなってくる。
このままアイツが入ってきたら確実にやばい。
俺もAも同じことを考えていたみたいだった。
俺とAは恐怖で足がガクガク震えながらも、這うように移動して店舗の入口へ向かった。
アイツが入ってくる前に外に逃げなければ。もうそれだけに必死で入口を目指した。
ガタガタガタガタガタ ガタッッ
・・・キィ・・・
扉が開いた。
と同時に、俺とAも入口の扉を開け、転がり出るように外にでた。
そのまま、俺の車に乗り込み、少し離れたコンビニで朝がくるのを待った。
警察?とも思ったが、今は考える力もなく、店長のいわれるままに店に戻った。
店に戻ると、パトカーが数台と、警察官が何人もいて大事になっていた。その光景で我に返り、自分たちが逃げ出したせいでアイツがなにかやったのか不安になった。
俺とAが店に戻ると、すぐにそれぞれ別のパトカーに乗せられて、いろいろと聞かれた。頭がぼーっとしていたので、すべては覚えていないし、なんて返事していたかもよく覚えていないが、こんな感じのことを聞かれた。
運転手の男性は1番レーン、助手席に乗っていたもうひとりの男性は2番レーンでそれぞれ亡くなったが、監視カメラを見ると、それぞれ亡くなる前にインターホンで助けを求めていたらしい。
監視カメラに映っていた俺たちの行動を確認して警察の人も不振に思ったらしく、色々と聞かれた。
でも俺もAも自動車が追突したこともインターホンで助けを求められたことも知らないというよりは、実際そのとき監視カメラには何も映っていなかった。
警察のいうには事故の瞬間もすべて監視カメラに映っていたらしい。
特にそれ以外は監視カメラに不審な映像が映っていなかったらしい。
当然、インターホンも助けを求めるインターホン以外は鳴っていなかったらしく、俺とAが鳴っていないインターホンに出ていた映像があるだけらしい。
まぁしいて言えば、俺とAが3時ごろから異常におびえてそのまま逃げるようにどこかに行っていしまったことくらいだった。
ただ、不審な映像は映っていなかったが、俺たちが店舗から逃げ出ると同時に、店舗内のカメラで不審な音声が録音されていたらしい。
「ニ ガ サ ナ イ」
彼らが心霊スポットから連れてきてしまった霊のせいだったのかもしれないが、もう俺もAもあの場所付近にはあれ以来近づいてもいない。
ご清聴ありがとうございました
乙
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