神隠しにしては大胆すぎる!?
トンネルに纏わる奇妙なお話です…。
町の近くにトンネルがあった。
そのトンネルは少し奇妙で、道の両側に川が流れていた。
何故かは知らないが、雨が降ったりすると決まって片側が増水し、溢れ出した水が道を覆い尽くしてもう一方へ流れ込むという現象が起こっていた。
そうなると歩いて通る事は無理になるのだが、自転車では問題なく通る事ができる。
水が流れている上を走るのは面白く、雨が降った後は近所の仲間とよくそこで遊んだ。
ある事件が起きるまでは。
台風が去ったある日、いつものようにトンネルに集まった。
大量の水が溢れ出し、地面が見えないくらいだった。
激しい水音が響いていた。
勢いをつけてどこまで行けるか、誰が一番派手にしぶきを上げれらるか、なんてのを競いながら、ひたすら往復していた。
Aの番になった。
その姿が、俺達5人の見ている前で、いきなり水面下へ消えた。
まるでいきなり床を外されたかのように、走っている姿勢そのままで水中に消えた。
「あ」
何が起こったのか分からなかった。
転んだ?潜った?落ちた?軽いパニックを起こしていた。
俺達はかなりの間固まっていたと思う。
水面は平らで、滝のような音だけが響いていた。
「A!!」
誰かが叫んだのと同時に全員が走り出した。
靴を、ズボンを濡らしながらAが消えた位置まで駆け寄った。
信じられない。
当たり前だが地面はしっかり存在する。
横になったところで隠れられる訳ないのだ。
だがAはいない。自転車すらない。
一体Aはどこへ消えてしまったのでしょうか?
詳細は次のページで!
「B、C!誰か大人呼んで来い!!」
2人が町へ走った。
見つからない。
やがてB、Cが大人を連れて帰ってきた。
しかし、誰もこの状況を理解できなかった。
「道の真ん中で沈んだかのように消えた」という説明は信用されずに、落ち着いて思い出せなんて事を言われ続けた。
そう言われても、他に話す事など無く、最終的に5人とも逆ギレ状態になっていた。
日が暮れて、随分経ってから俺達は帰されたが、取り調べはしばらく続いた。
その後も捜索は広範囲に渡り続けられた。
しかしAはおろか、Aの自転車さえも見つからなかった。
あれから10年以上経つがAは見つかっていない。
事件直後、色々悪いうわさが飛び交ったが、その完全な失踪具合は、俺達が何か関係しているという疑いを消すのに充分だった。
俺達が悪いわけでも無いが、なんとなく町に居辛くなってしまった。
俺は今でも、底の見えない水溜り等には警戒している。
しかし・・・
俺達が見たAの消える瞬間は何だったのか。
分からないまま、心の片隅にわだかまりが残っている。
子供の頃は何も出来なかったが、大人になった今、出来る事は色々ある。
台風の日に、5人であのトンネルへ行ってみるのも良いかも知れない。
何があったのか。
そうしなければ、これから先、心の底から笑える事など無い様な気がする。
5人の前で鮮明にいなくなってしまうとは…。
全ての経緯がはっきりする日はくるのでしょうか。
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