今から15年ほど前、俺はSEとして某大手家電メーカーの情報管理部で働いていた。
本社の情報管理部だけどその部署は本社ビル内にはなく、大手町の○○ビルという古いビルの2階にあった。
汎用大型コンピュータが設置されたマシン室が8階にあり、プリントアウトされた帳票などは8階まで取りに行く必要があった。
仕事の性質上、徹夜での作業やシフトを夜間にして作業することも多かった。
そのビルのエレベーターは確か3箇所あったと思うが、夜11時を過ぎると通常使っていたエレベーターは5階止まりになり、
5階で一度降り、廊下を50mくらい歩いて別のエレベーターに乗り換えて8階へ上がる必要があった。
セキュリティの関係なんだろうが非常に面倒くさかった。
いやそれよりも、面倒くさいのなんて吹っ飛ぶくらい不気味だった。
なんせ古いビルの上、乗り換えで歩く廊下はほぼ真っ暗。
ところどころに点灯している非常口の誘導灯の薄明かりだけ。
とにかく、深夜の人気の無いビルの暗い廊下ってのは非常に不気味だった。
そのビルには吹き抜け部分があり、エレベーターホールに面していたので窓から吹き抜けが見えた。
吹き抜けは、4階の屋根にあたる部分から屋上まで。
要するに5階のエレベーターホールの窓からは、その吹き抜けの底が見えるということ。
そしてある日、ある女性がそこで投身自殺をした。
吹き抜け部分に、階数は失念したがかなり上の階の窓から身を投げて即死。
理由はいろいろと囁かれていたが、本当のところは知らない。